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厚底シューズありかも。HOKAに足りない要素。そして、ナイキ・ヴェイパーフライきた

先月、購入したニューバランスのM980という厚底シューズがとても良い。
「とても良い」というのは、走っていて心地よいという意味。長時間走っていても、踵・膝・腰にダメージが蓄積されない感覚がある。

今までは薄いソールのレーシングシューズばかり履いてきた。理由は接地のダイレクト感や、足裏で地面をつかむ感覚を重視していたから。なぜなら、スピード・タイムという結果を求めていたため。

しかし、ロングディスタンスでは記録を目指すつもりはない。短距離や跳躍競技では記録のために競技を続けてきたが、ロングではのんびり走る方が楽しいと感じている。

長距離というのは一歩一歩のダメージは少なくとも、それが積み重なって、気がついた時には慢性的な故障につながる恐ろしいアクティビティだ。骨や軟骨、靭帯などが繰り返し負荷によって金属疲労のようにボロボロなってしまう恐れがある。

それなのに、薄いシューズで長距離も走っていた。結果、膝や足首を痛めてしまっていた。しまっていた、というのは、リハビリの先生に指摘されて分かったこと。そう、自分で気づかないもの。走り出しは多少違和感があったとしても、しばらく走って温まれば違和感逆が消えてしまうと、それがケガのはじまりだと気が付きにくい。つまり、自分で明らかにケガをしたと気づいた時にはすでに遅い。とにかく早めに気が付き、対策を考えられて良かったと思う。

ではどんな対策が良いのか。まずはギヤから考えた。自分のゆっくりランにあったシューズを探すことにした。その中で考えたのはクッション性。ただしクッションのきいた厚底シューズは苦手だった。厚底は、足裏感覚や足裏のアーチが使えないというデメリットが大きく、それは走りのタイミングが変わってしまうデメリットの方が大きい。走りのタイミングは、腕振りや体幹のバランス、背骨のアーチ、反発、各関節の連動性、頭の位置、脛骨に乗る感覚、股関節伸展と膝のロッキングのタイミングなどなど、数え上げたら切りがない多様な要素が融合して成り立つ。フォームなんて一言で片づけてしまう代物ではない。厚底シューズは、走っていて気持ち悪いシューズというのが自分の感想だった。

ところが、このニューバランスのM980というシューズは走っていてとても心地よい。はだしで芝生を走っているに近い感触で、どこまでも走っていたくなる。よくよく裏を見てみると、シューズの底の素材は均一素材でフラット。とてもシンプルなつくりだ。そういえば普段履いているアシックスのスカイセンサー・ジャパンもほぼ単一素材でフラットな底をしている。

シューズは底が薄くても厚くても、シンプルなつくりが自分の足に合っている。シンプルの極限ははだしだが、現代においてはハダシはあぶない。ハダシは土や草の上を走っていたころの話だ。現代では地面がコンクリートアスファルト。足はこれらの硬い人工物を走るように設計されていない。足底を守るためにシューズが存在しているのだと思う。足底を守りすぎると問題だが、ノープロテクションだとそれも問題。

話を戻して、厚底シューズっていいかもなぁ。。。という思いで、HOKAというメーカーのスティンソンというモデルも買ってみた。トレイルシューズとして最近(知っている人は当然前から知っているけど、私は知らない)注目度が高いメーカーらしい。底の厚さはなんと35mmくらいある。完全に厚底ブーツの世界じゃないか。。。と、思ったが、走ってみたらまったく問題ない。足裏のアーチの機能を使うことができ、シューズの中をはだしで走っている感覚。そして、登りもふくらはぎに負担がかからずスイスイ走れる。下りは安定性が高くグリップも良い。厚底による不安定さからくる足首の捻挫の不安も特にない。ふかふかのトレイルで走ると、さらにふかふかになってしまうが不思議と前にしっかり進む。クッションによる時間差も限りなく小さく、身体エネルギーを地球に対してダイレクト伝える感覚と、その反力をもらえる感覚にズレが少ない。厚底でも、設計思想が人間に備わっている機能側に立っていれば、こんないいものが作れるってことだろうか。

「そんな底が厚いシューズは初心者向けでスピードは出ない」という人もいるが、3分00秒〜3分20秒/kmくらいのペースで走る必要がない限り、これで十分だと感じた。現に4分/km程度なら20km程度走っても全く問題なかった。逆に3分/km程度で走るにはこのシューズに足りない要素は、接地のスムーズな重心移動を促すソール形状の見直し、軽量化、足首あたりの靴擦れの問題、母指球あたりの剛性など。

とはいえ、そもそものプライオリティ1は接地ダメージの軽減。このシューズは接地ダメージを軽減できて、なおかつ4分~3分30秒/km程度で走れる。自分の価値観を壊してくれるとても良いアイテムだった。

そんな、食わず嫌いをまた一つ克服できたことで、新たに心地よいものを見つけられてとても良かったと思う。とりあえず、クッションが薄い今までのシューズと、このぶ厚いシューズたちをうまく組み合わせて、2月までトレイルやロングジョグを楽しみたいと思う。

 

追記

HOKAは約300kmくらい走って、膝と腰を痛めてやめた。やはりクッションが強すぎると、本来のタイミングで筋力を発揮できないため、神経系のズレ・筋収縮のタイミングのズレが少しずつ身体に蓄積されてくるようだ。身体が調和振動子の一種として最低エネルギー状態でコスパが良い動きをしたくても、クッションが効きすぎたシューズの一箇所が調和された固有振動数を乱すことが分かってきた。これに対応する神経システムを構築すると、今度は薄いシューズでケガをする可能性が出てくる。なんでもほどほどが良いのだろうと思う。ほどほどではほどほどの効果しか出ない、とは誰かの言葉だけど、私はプロでもなんでもないので「ほどほど」で楽しめればいいと再確認できた。というわけで、HOKAは、たまの息抜きウォーキングや軽いジョグで使っていこうと思う。クッション性は確かに素晴らしいのだから。。。

3月からは陸上競技です。

 

追追記

やはりと言うべきか。厚底シューズのナイキ・ズームヴェイパーフライ。厚底でもシューズの中に高反発素材を入れて、地面反力をダイレクトに推進力へと変換するコンセプト。速く走る要素の中で、足のアーチとふくらはぎのバネはとても重要だ。フォームがめちゃくちゃでも、足裏アーチとふくらはぎのバネを利用すると、はっきり言って速く走れる。もちろん、長い距離を走るには効率の良いフォームの方が良いのは当たり前。そういえば、足裏アーチとふくらはぎのバネがきいた、力強いランニングフォームって、強い海外の選手に多い。これに効率が加われば、素晴らしい結果が出そうだ。

と思っていたら、東京マラソン設楽悠太選手によって日本最高記録出ました。もちろんシューズのおかげとは言わない。結果は選手の努力と工夫のたまものだから。しかし、このシューズを選んだことが、彼の中で何か打破したいものがあったということかもしれない。フォームも箱根駅伝の時より、若干前傾していたように感じるし、攻めているなと思った。

(2018.2.28記)

 

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ニューバランス M980  ぼよ〜んとジャンプ

 

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HOKA スティンソン   箱根大涌谷にて