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「ケガ予防のトレーニングをしている人ほど、ケガをしている」という矛盾

スポーツに怪我はつきものという言葉がありますが、だいたいあっていると思います。

スポーツによる怪我は、種類によって外傷と障害に大きく分けられます。

コンタクト系や機材系は外傷が避けられないスポーツですし、ランニングなどの非接触スポーツは繰り返し運動による障害が多い傾向にあります。

また、サッカーやテニスやバスケットボールなどでは、特異的なスポーツ動作の繰り返しによる障害は避けられないものです。

これらのケガはプロ選手から趣味レベルの一般の方まで、どのレベルの方々でも何かしら存在するものです。

ですから、そのために予防という概念が必然的に生まれました。予防医学の急速な発達により、適切なトレーニング・休養・栄養・それをとりまく知識・治療方法などが適切に運用され、選手生命を伸ばすことにつながりました。

これらの知見・技術・ノウハウは、一流選手のみが恩恵を受けているわけでは無く、一般のスポーツ愛好家にまで浸透しつつあります。それは新しいビジネスとしてスポーツ産業の振興にもつながっているのはいわずもがなです。

トップ選手が愛用しているサプリ、トップ選手もやっているエクササイズ、一流アスリートも定期的に使用している酸素カプセルなどのプロモーション活動は、マスである一般人の購買意欲をかきたてる手法として、ごくあたりまえの販売方法です。

 

その中で、ケガ予防・パフォーマンスアップのエクササイズについてふと感じたことを書いてみたいと思います。

昨今、ケガ予防のため、またパフォーマンスアップのためと称して、多くのエクササイズが提唱されています。実際、前述のようにコンディショニングとして毎日とりくんでいるトップアスリートも多くいます。

ヨガ、ピラティス、コアトレ(体幹)、コード・スリング系(TRXやレッドコードなど)、ファンクショナル系などなど、日々新しいエクササイズの名前が公開され続けています。

その中でも、機能的な身体の使い方、いわゆるつかえる身体をコンセプトとしたプロモーションが目立ちます。無駄な筋肉はいらない、つかえる筋肉とは。コアを鍛えてしなやかな身体づくりなど、一般アスリートに響くフレーズをたくみに使っているのではないでしょうか。

ターザンという一般向けエクササイズ雑誌の表紙でも、そのようなフレーズをよく見受けます。自転車系雑誌でも、一昔前は、新製品の紹介、レース結果などが記事として多くの紙面を割いていましたが、昨今ではトレーニング系が多くなり、さらには「自転車乗りに使えるからだ」的なタイトルがより目につくようになってきました。

それら事実から言えることは、一般アスリートも強くなりたい・速くなりたい・かっこよくなりたいという願望があり、それらをかなえるためには今までのようにただひたすらトレーニングをしていては、無駄な時間をかけるばかりか、やりすぎてケガをしてしまうということに気づき始めたわけです。効率的で効果のあるトレーニングを求めているということでしょうか。

というか、リリースする側ががそのように仕向けているわけですから、お互いwin-winという関係なのでしょう。

と、言いたいところですが、どうゆうわけか身体をうまく使えるようになるとうたうトレーニングをしている人ほど、実際うまく使えていないために怪我が多いという現象を現場ではよく耳にします。

ケガ防止に役に立つファンクショナル系トレをやっているのに、実際はケガをよくする。例えば、試合で何度も足首のケガをするので足首周辺から下肢にかけて機能的エクササイズを行い、正しい動きを習得すれば、足首のケガを防げると考える。ヒップを使えるようにする、内転筋を使えるようにする、ホームスリクュー動作の改善を行う、あげればキリが無いがファンクショナル的なフォームを追求して改善されたはずなのに、レース・試合でまた同じような箇所に痛みが出る。そして再び機能的エクササイズに没頭する。

ピラティスでコアを使えるようになると宣伝していても、実際のスポーツ動作ではコアをうまく使えない。初心者だけのことなのかもしれないが、ならばピラティスの先生があらゆるスポーツが得意かといえばそうではない。ピラティスの先生はピラティスがうまいのであって、身体の応用的使い方はまた別の問題であり個人個人異なるという点に注目すべきです。

TRXで体幹・インナーが鍛えられるという。TRXのレッスンを受けると、常連のみなさんは非常に慣れた感じでエクササイズをこなす。「すごいですね!」と話しかけ、何かスポーツをやっているのですか?と聞くと、ランニングをやっていたがケガをするのでジムに切り替えたと答える方、球技とか走るとか苦手なのでという返答の方、サッカーをやっているが体幹が弱いので補強としてやっている、ダイエットしている、など様々なこたえが返ってる。

では、実際にスポーツ動作で改善されたか?、ケガや障害が減ったか?と伺うと、こたえはイマイチわからないが多いようです。中には、すごくよくなった!と言い切る方もいますが。

本当に良くなったかどうかは別として、本人がそう思う・感じることは重要だ。つまりこれも結果は個人個人異なります。

 

つまり、メインでやっているスポーツ動作がそもそもうまい人は、動作改善エクササイズやケガ予防エクササイズも効果的なものとなり、メインでやっているスポーツ動作があまりうまくない人は、改善・予防エクササイズをやっても、いまいちポイントをつかめないという、理不尽な現象が発生しているということです。

 

この状況の特徴は、競技レベルが高い選手が効率的でケガをしにくいナチュラルな動作をしているかと言うと、果たしてそうではないのが現実です。つまり、オリンピック選手だからといっても身体の使い方が効率的でケガとは無縁の身体操作をしているわけではないということです。

そもそも、オリンピック選手はケガはつきものです。オリンピック選手がケガをする理由は簡単です。身体の多様性を失ったからです。競技という特殊な動きに全てのエネルギーを注ぎ込んだことで、身体がその競技に適したカタチに変化したからです。変化できることが人の能力の一つですから、それは素晴らしいものですが、そこにはリスクが存在したというわけです。

スポーツはつきつめると特異性の極限であるので、身体の多様性を潰してしまいます。多様性を失った身体は、ゆらぎやあそびを無くし、特定動作では痛みが発生し、特定動作意外ではギクシャクした動きとなります。

水泳選手が陸上を歩くとすぐに疲れたり、自転車選手は立っているだけで疲れるなどはその一例です。あれだけ泳げて、あれだけ漕げるのに、身体が特殊化した結果、多様性を失ってしまったのです。

レーニングの方向性はひとそれぞれですが、特殊化の果てにあるものは障害であり、生物学的に言えば退化です。何かの環境要因であっというまに絶滅してしまいます。

ケガ予防のトレーニングとは特殊化した身体をナチュラルに戻す行為、または特殊化した身体とナチュラルな身体の差を知る行為なのかもしれません。

そのようにうたうエクササイズは多いのだけど。。。